水無月ネクの雑記、備忘録

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『THE MATCH』武尊 vs 天心の前にわざわざ言っておきたいこと


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今回は、6月に控えたキックボクシング世紀の一戦の前に、自分が考えていることを書いていこうと思う。調査不足や記憶違いで、事実誤認が多いかもしれないが「あの一戦の前に、自分はこう考えていた」という記録を残すという、ある意味ブログの本義(WEB上のログ)的なものにするのが目的。

ちょっと新生K-1(以下では単に『K-1』とする)に批判的な物言いが多くなってしまうと思うけど、あまり表現が冷たくならないように……ということで目次を。

 

なぜK-1は『鎖国』をするのか

K-1選手と戦いたければK-1の所属選手になれ──。一部海外選手などはワンタイム契約をしているようで、例外はある様子ではあるが、これがK-1の基本方針だ。

一見当たり前のようだが、団体間での対抗戦や、他団体へのスポット参戦というのは、K-1以外の団体の間ではそう珍しくもない。しかしK-1は交流に消極的である。それでいて、K-1がNo.1の舞台であるという主張は積極的に行う。個人的には、直接戦って、名実ともにNo.1であることを示せばいいと思う。

思うに、旧K-1が一旦表舞台から姿を消し、現在の体制のK-1として再び世に出てきた際に、「あのK-1がまた始まったのなら出たいな」という形で過去のネームバリューを引き継ぐことが出来たことにより、スタートダッシュの時点で割と参戦者が集まったのではないか。そうすると『最大手はK-1』という同調バイアスが業界に広がり、大手がますます大手になるサイクルが発生する。また『K-1が最高の舞台』と再三主張することによるザイオンス効果?サブリミナル効果?要は刷り込みによって『嘘から出た誠』を作り出していこうという戦略なのではないか。

いずれにせよ、真にK-1が最強であると主張するのであれば、時には他団体との真剣勝負をしてほしいというのが率直なところだが、戦わずして最強を証明する方法も一つ考えてみた。

他団体を全て敵対的買収で飲み込む──。別に敵対的であることは必須ではないのだが、格闘技興行は海千山千の経営者たちが鎬を削る世界であることだろうと勝手に想像するので、結果的に敵対的買収になってしまうのではと考える。

他団体との直接対決はせず、No.1であるはずの自分たちのイベントに集中して盛り上げていけば、ファンも利益も増えていくはず。その中でどうしても頭打ちになった時が本当の勝負所。選手を引き抜くなどとスケールの小さいことはせず、他団体を丸ごと飲み込む勢いで行ってほしいものだ。すると選手が増えすぎて試合に出られないかもしれない。そこに関しても考えを一つ。

今もまだ唱え続けているフレーズかはわからないが、一時期K-1は『100年続くK-1』というキャッチコピーを用いていたと記憶している。100年続くということは、スポーツとして広く普及することであろう。いつでもどこでもどんなレベルでも試合が行われているようになれば、舞台を見つけられなくて困ることはないだろう。K-1は既にKrushKHAOS、学生向けにK-1甲子園K-1カレッジなどなど、100年構想に向けて裾野を広げるための大会を開催している。しかし、最近KHAOSがあまり機能していないようだし、全体的な開催頻度もまだまだかなと感じる。

K-1最高」言葉にすれば1秒で済む。しかし、それに誰もが納得いくかどうかは別である。実際に戦うか、経営面で圧倒するか──。再三にわたりNo.1であることを主張するのであれば、どちらかを本気でやるところを見せてほしい。

まあ、前者をやろうというのが今回の『THE MATCH』なのだが。

武尊選手の「三階級制覇」

身長168cmの武尊選手。かつては那須川天心選手と同じ55kgで試合を行っていたこともあった。しかし、同階級に敵無しになったため、徐々に体重を増やし現在は60㎏(K-1スーパーフェザー級)で試合をしている。データを取ったわけではないので申し訳ないが、武尊選手の身長とリーチは、K-1スーパーフェザー級の中では平均以下ではないかと思う。そんな中でも連勝を続けている武尊選手は流石だが、同階級の中でもかなり大型の選手であるレオナ・ぺタス選手に対しては、打ち合ってややダメージを負うシーンや、いくらか距離を残しての空振りなどが見られた。

武尊選手には圧倒的なパンチ力と回転力があり、多少のリーチ差や体格差も跳ね返してきたのは周知のとおりであるが、その強すぎるパンチが己の拳にも跳ね返り、拳の怪我に悩まされがちであることもまた周知の事実。思うにK-1は、武尊選手の階級を上げさせて対天心選手の機運をそらしつつ、K-1史上初の3階級制覇王者という箔付けをして、スーパーヒーローとして祀り上げるつもりだったのだと自分は見ている。拳の怪我を繰り返すのも、K-1の理想のレールに乗る形で階級を上げ、それに伴って筋肉量を増やし、文字通り強にして大なる者をフルスイングで薙ぎ倒してきた弊害とも言えるのではないか。

武尊選手は階級を上げていくにあたって、後ろ髪を引かれる思いが無かったのだろうか?K-1内ではしっかりと最強を証明してきたが、外から売られた喧嘩を買わないままにステップアップしていくことに疑問を覚えなかったのだろうか?

もしも心にかすかにでも引っ掛かりがあったのならば、その時にクリアにしておけばここまで話がこじれることもなかったのではないかと思えてならない。しかし、武尊選手本人にその気があったとしても、団体が許さなかったのだろう。

 

『機運』か『定例』か

今回の『THE MATCH』は本当に全カードが楽しみで仕方ないドリームマッチである。ここまで機が熟すのを待ったからこそ実現できる大会なのかもしれない。しかし、K-1が初めからもっとオープンな姿勢だったら…武尊選手がフェザー級に居るあたりで、K-1が外に目線を向けていたら…武尊選手が突発性難聴を患うほど思いつめることも無かったのかな、などと思ったりしてしまうのである。アスリートファーストという言葉が叫ばれ始めて久しいが、出来ることなら、本人の希望がより早く叶う格闘技界になっていってほしい。

ちなみに、今回の『THE MATCH』のような対抗戦を今後行うかに関して、K-1とRISEそれそれを代表して以下のようなコメントがあった。

K-1中村プロデューサー「世紀の対決を行う空気感が高まった時にやるべきこと。それは10年後かもしれないし、3か月後かもしれない」

RISE伊藤代表「今回をきっかけに1年に一度か2年に一度か出来ればいい」

この発言から、K-1中村Pは、格闘技興行は水物であり、機運を逃さず最大限に高まった熱を爆発させるものだという考え方なのかなという風に感じたのだが、K-1が唱える『100年構想』に近いのは、むしろRISE伊藤代表の考え方ではないかと個人的に思う。

漫才日本一を決める『M-1グランプリ』を例に考えてみる。一時は立ち消えになったりしながらも、近年はなんだかんだで毎年開催する流れに落ち着いている。その中で「今年のM-1はつまらなかった、レベルが低かった」と囁かれることもある。しかし、大会全体の評判に関わらず、M-1は毎年開催される。芸人たちは1年に一度必ずある舞台に向けて、一種の安心を持って努力を続けている。それゆえに毎年の出場組数も増え続けているのではないか。

頂点を決める舞台が常に在り続けてくれるからこそ、挑戦を迷わない。漫才界にはM-1という形でこの図式が存在する。一方の格闘技はどうか。K-1もしくはRISEででチャンピオンになれたとしても、誰もが認める日本一にはなれない。ましてや世界一など…。

『今年のTHE MATCHはレベルが低かった。王者がパッとしなかった』それでいいのではないかと自分は思う。頂点を決める舞台が常にあることで、思い切ってそこを目指せる。THE MATCHを開催するからにはその都度大成功、伝説のイベントにならなければ…とする必要はなく、毎年あるからこそ「〇〇年のTHE MATCHは伝説だったよな」と。

キックボクシングという競技の価値を、水物の鮮度に任せるという方針では、普遍的なスポーツ化──すなわち『100年構想』には程遠いのではないだろうか。

 

まとめ

K-1は対抗試合の積極化、または他団体の買収を推し進めて欲しい。

武尊選手はスーパーフェザー級まで駆け上がりすぎたかな…もっと怪我が少なくかつKO取れるスタイルをじっくり作ることも可能だったのでは。

これほどの大ごとだからこそ素晴らしい今回の大会だが、選手が思い悩むよりも早く望みを叶えてあげてほしい。

『THE MATCH』は定期開催にしてほしい。

自分は那須川天心選手が勝つことを期待する。バンナ vs ホーストだったらホーストを応援する少年だったから…要はパワーが無い方、テクニックやスピードでやりくりする選手が好きだから。

 

追記

これを書いている間に、今回予定されていた『THE MATCH』フジテレビ生中継が取りやめになるというニュースが入ってきた。スキャンダルの影響と見られているが、6/2現在どうなるかわからない。

『機運』が最高に高まるのを待てば待つほど、舵取りが難しくなる…だからこそ、伝説、奇跡と言われる興行が生まれるのかもしれないが、その機運任せの方針の裏では、披露の場が突如無くなった選手たちが涙を呑んでいるのかもしれない──。