水無月ネクの雑記、備忘録

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水無月琴子に見る様々な『心理効果』(ときメモ2)

このブログのメインコンテンツであるはずの、水無月琴子についてようやく書こうかと(笑)

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目次も初めて使ってみる!とくとご覧あれ!

はじめに

恋愛シミュレーションゲームときめきメモリアル2』の主人公は、プレイヤーが自己投影するために無色透明さを与えられている。

しかしそれは徹底されているわけではなく、主人公はその世界に住む一人の人間として、変えようのない属性も与えられている。

例えば、陽ノ下光、麻生華澄と幼馴染であることや、一度ひびきの市を離れ、再び戻ってきた事。これらに関してはプレイヤーが関与出来ないため、何度プレイしても変わらない事実として当作品に横たわっている。

幼年期にプレイヤーの操作次第で会う会わないを選べるキャラ達(寿美幸、一文字茜、白雪美帆、赤井ほむら、伊集院メイ、九段下舞佳)は、その娘に会えばその娘とかつて縁があった男子高校生になるし、会わなければそうならない。

幼年期に出会えないキャラたち(八重花桜梨、佐倉楓子、白雪真帆、野咲すみれ)は、幼年期にプレイヤーがいかなる行動をしても、高校生になった際には、ゼロから関係を築いていくことになる。また、作中において、主人公の変えようのない属性(かつて住んでいたひびきの市に幼馴染がいる)の影響を受けない。

さて、一人だけ、幼年期に出会えないにもかかわらず、主人公の変えようのない属性の影響を受けているヒロインがいる。そう、水無月琴子である。

水無月琴子は中学入学時にひびきの市に引っ越してきて、陽ノ下光と仲良くなり、ひびきの高校に入学。高校入学と同時にひびきの市に戻ってきた主人公とは初対面ではあるものの、光から良く話を聞かされていたため主人公の存在は認知していた。このため水無月琴子は、主人公が光や華澄の幼馴染であり、かつてひびきの市に住んでいたことも知っている。

この事実により彼女は、他のヒロインよりも『主人公の属性』によって、大きな心理的影響を受けていると考えられる。以下にその数々を記す。

ザイアンス効果(単純接触効果)

”単純接触効果(たんじゅんせっしょくこうか、英: mere exposure effect)は、(閾下であっても)繰り返し接すると好意度や印象が高まるという効果。1968年、アメリカの心理学者ロバート・ザイアンスが論文 Zajonc (1968) にまとめ、知られるようになった。

ザイアンスの単純接触効果、ザイアンスの法則、ザイアンス効果などとも呼ばれる。対人関係については熟知性の原則と呼ばれる。”

引用元

単純接触効果 - Wikipedia

ときメモにおいて、デートを繰り返して好感度を上げていくゲームシステムそのものがザイアンス効果に他ならない。しかし水無月琴子は、ゲーム開始時点である高校入学以前から、光に幾度となく主人公について聞かされていた。そのため、入学前から主人公に関してはプラスの心理効果を受けていたと思われる。言い換えると、ハードルが上がっていたのである。

ストループ効果

"ストループ効果とは、2つの意味の異なる刺激を同時に提示されると脳が混乱する現象のことを言います。心理学者ジョン・リドリー・ストループによって立証された心理学の一つなのです。

例えば、「緑」と書かれた文字があるとします。

すると…文字は緑なのに、文字の色が青であることに人は違和感を覚え、脳に混乱が起こるのです。"

引用元

【恋愛心理テクニック】ストループ効果の使い方から注意点まで | いきなりデートラボ

 

対人関係においても、ストループ効果は発生する。わかりやすく言うと、ハードルが上がってたけど期待外れだったという状態。引用元が詳しいので参照して欲しい。

 

初めて出会う前から、琴子の主人公に対する印象は、ザイアンス効果によってハードルが上がってしまっていた。しかし、実際の初対面時の印象と言えば…ときメモ2プレイヤー諸氏であればご存じ

「ふーん……。なんだかぱっとしない男ねぇ。」

である(笑)

そもそもぱっとする男をイメージしていたこと自体、ザイアンス効果が働いていると考えられる。琴子は光のことが好きで、光に幸せになってもらいたいという思いから、効果が強すぎた感はあるが…。

ザイアンス効果からストループ効果に至る流れと見ることのできる箇所が、キャラソンシングルCDのボイスモノローグに克明に記されているので引用してみる。

「はぁ~あ。あれが、光の好きな男ね…。中学の時からずうっと言われてたけど、どっから見ても、やっぱり冴えない感じよねぇ。光にはもっとお似合いの人がいるはずなのに、なんでよりによってあんな男なのかしら。(中略)それとも、私が期待しすぎただけなのかしら?いいえ、そんなことないわ。きっと光は、会えなかった間に想像が膨らんで、昔の思い出を都合の良いように解釈してしまっているだけなんだわ。(中略)光には幸せになってもらいたいのに、あんな…」

引用元:シングルCD『ときめきメモリアル2 Blooming Stories 8 水無月琴子』トラック2「まだ見ぬ恋のはじまりに」

典型的というか、お手本のような推移ではないだろうか(笑)

特に下線部に関しては、自分自身に言い聞かせているとも取れるのではないか。話を聞かされている間に想像が膨らんで、光の好きな男を都合の良いように解釈してしまっているだけだ、と──。

さて、そんなわけで、せっかくザイアンス効果でプラスに働いていた主人公への印象は、ストループ効果によって急降下。これは、ゲーム開始時の、琴子の主人公に対する評価の低さ、デートへの応じにくさとして表れている。

バランス理論

”「バランス理論」とは、人はいつでも均衡の取れた人間関係を求めていて、そのバランスが崩れていると、自分の意見や見方を変え、その関係を修復しようとする心理傾向のことです。例えば、友人に嫌いな相手がいれば、自分も嫌いになってしまうのです。逆にいえば、友人が好きな人物のことはあなたも好きになってしまいます。”

引用元:ロミオ・ロドリゲス・Jr,2016,他人が必ず、あなたに従う黒すぎる心理術,P.102

これまでは話に聞くだけだった主人公が目の前に現れ、光、琴子、主人公の三者間での付き合いが始まった。

琴子は光に「あんなぱっとしない男が良いの?」と言ったかどうかは明らかではないが、光の態度は一貫して主人公に好意的であった。

すると琴子の心中には「思い出の中だけじゃない、今の彼を見ても、光はずっと彼を想っている…やっぱり彼には良いところがあるんだわ。私にはまだよくわからないけど…」といった推移が起こるだろうと考えられる。まさに上記のバランス理論の通りと言えよう。

更に主人公は琴子をたびたびデートに誘い、今度は直接の接触によりザイアンス効果を起こしていく。ストループ効果で下がった印象は、バランス理論と、改めてのザイアンス効果で再び高まるのである。

カリギュラ効果心理的リアクタンス

カリギュラ効果カリギュラこうか)別名カリギュラ現象とは、禁止されるほどやってみたくなる心理現象のことを言う。例えば、「お前達は見るな」と情報の閲覧を禁止されると、むしろかえって見たくなる心理現象が挙げられる。”

引用元

カリギュラ効果 - Wikipedia

 

この記事のために調べて知ったが、カリギュラ効果という言葉は主に日本でしか使われておらず、心理学的な用語としては「心理的リアクタンス」が用いられるとのこと。

 

主人公は馬鹿で鈍感な唐変木だけど良い奴かもしれない!認めてやらなくもないこともないかもしれない!!それになんだか妙に気になってしまう!!!

…しかし!しかし!!

そもそも主人公は「光の想い人」であるからして、自分は興味すら持つべきではないのである。ちょっと「良いな」と思ってしまったとしても、その気持ちは押し殺さなければならないのである。

これこそ水無月琴子の物語の真骨頂!!!

光のお相手だからダメ、でも惹かれてしまう…このあたりの心情描写は、水無月琴子の全キャラクターソングに存在する。水無月琴子というキャラクターを表現するうえで、避けては通れない要素ということだろう。以下に一部を紹介する。

 

もっと あなたのこと 知りたいと 思うけれど
いつも 隣に居る 彼女には 何も言えない

誰かのことを 愛することが
こんなに苦しくて つらいなんて 初めて知った

──『春のゆき』より

 

彼女の微笑みを 壊すものは許せなくて

どんな悲しみからも 遠ざけたくて

なのに何故なの 隠した恋は

夜毎 色をつける

──『見えない小石』より

 

琴子キャラソンの歌詞についてはまた別の記事で言及するつもりなので一旦置いておいて、琴子の気持ちの変遷については以下の通りと思われる。

ザイアンス効果↑ストループ効果↓バランス理論+改めてのザイアンス効果↑と来て、カリギュラ効果で下がって↓上がって↑、エンディングに向けて最高潮を迎えるのである。

まとめ

金属などの物質に対し、加熱と冷却を繰り返すと激しく劣化する。水無月琴子の心の鎧も、激しく揺さぶられついに崩壊。中学入学直後から、光に主人公について聞かされ続けたことに始まり、6年もの長期間にわたって心理効果による揺さぶりを受け続けた結果である。

高校に入学し、主人公と出会った直後のストループ効果。これ以降主人公が琴子にアプローチしなければ平穏に済むのだが、アプローチを受けてしまったが最後。とんでもない感情のジェットコースターに振り回されることとなってしまう。

以上からわかる通り、水無月琴子のドラマには、主人公との出会い以前からの「下地」がある。冒頭で述べた、主人公の持つ「変えようのない属性」の影響で、主人公への想いは出会い以前からじっくりと火を入れられているのである。

「下地」から、心理効果の「仕掛け」が連鎖発動してしまうかのような日々を過ごすことになる水無月琴子。クールな大和撫子の仮面をかぶっていても、中身は十代の少女。結局本編中では激しく感情を発露させ、主人公、ひいてはプレイヤーを色んな意味で驚かせることとなった。

水無月琴子は「恋の罠」にかかってしまった。様々な心理効果に完全に包囲されていた──。そんな風に思うのである。

追伸

プレイヤーの介入の余地がない要素の影響を多大に受けている、水無月琴子というキャラクターを振り返ってみると「この要素を変えてみたらどうなるんだろう?」という考えが浮かんできた。

例えば、ストループ効果が起きない場合。主人公は光と離れ離れになって以来、様々な環境に恵まれ才能が開花。神童ともいうべき実力を備えてひびきの市に戻ってきた。客観的に見てどんな女子にも見劣りしないような「ぱっとする」新入生だったら…?

もっと大胆に行くと、そもそも光の幼馴染ではない、事前情報が何もない男子とだったら、どのような接し方になるのだろうか…琴子が匠や純一郎とくっつく場合がそうなのだが、プレイヤー目線でも見てみたくなった。

特に後者の場合は、すでに妄想が走り始めている。主人公に対しても少し漏れ出ているが、本来のニュートラルな琴子は、もっと気さくに冗談を言ったり、死語に近いような古い言い回し、故事からの引用などを連発しては「なんだよそれー(笑)」などと笑いを誘ったりしていて、天然な変わり者として人気があったりするのかもしれない。

そんな妄想を、そのうちTwitterでの超ショートストーリー『琴子と日常』(以下の過去記事参照)に似た形で発表してみたいなと、今回の記事を書いていて思った次第である。

 

minaduki-nek.hatenablog.com